みなさん、『マリアさま』にご興味をもってくださってありがとうございます。蓄音器でSP盤をきくことは、小説を読むことにとても似ています。演奏者がそこに生きている。目の前で演奏してくれている。時間をこえて、こころからそう信じられてしまうのです。僕の小説も、そうなってほしいなと、こころから願います。書いているときは、スタジオでひとり演奏しているようなものです。みなさんのそばに、今日も、いい小説といい音楽が、天使の羽のように舞いおりてきますように。
※テイク・ミー・アウト・トゥ・ザ・ボールゲーム - フランキー・マスターズ TAKE ME OUT TO THE BALL GAME - FRANKIE MASTERS はSPOTIFYに登録がなく、プレイリストには収録されておりません。ご自身で検索などして探してみてください。
世界のかけらを書いているようで、そこには〈ぜんぶ〉が凝縮されている。三崎も京都もどこかの街も、小説のなかではすべてがつながっており、短編小説だがひとつの小説でもある。いのちがあり、うたがある。生きるいのりがある。
小説を読むことで、こんなに強く祈りを感じたのは初めてかもしれない。相手に届くかどうかわからない「賭け」をしながら紡がれる、いしいしんじの祈りの言葉。それはどんな呪いの言葉より強い。この作品が世に出た今、知るべきです。呪いの言葉はもう負けです。
一篇一篇がきらきらと輝いて、宝石をとじこめたような1冊。「不思議な世界観」なんて言葉は使いたくないけれど、いしいさんの世界に迷い込んだら出たくなくなります。個人的に好きなのは「私の心臓」。大切に、大切に売っていきたい本です。あなたにとっての「マリアさま」になりますように。
なんときれいなお話たちなんだろう。不思議な世界なのに、まるで違和感がない。スッと心に馴染んで心地よい。キラキラ、ぱかぽかと太陽につつまれているような気持ちの良い短篇集でした。
作家の自由な想像力とインスピレーションを湧いたままに味わえるような短編集でした。「自然と、きこえてくる音」が一番好きです。ケンチさんという人物が不思議な懐かしさを醸しており、味わい深さがありました。
久しぶりにいしい先生の小説を拝読いたしましたが、変わらず言葉が美しく、素足で砂浜や野原を歩くような気持ち良さでした。
私は「とってください」というお話が好きです。自分が死んだらこんな風に素敵な弔辞を読んで欲しいと思いました。奇麗なだけではなく、どこかに人間臭さが感じられ、スッキリしないものもありますが、まぁ社会ってそんなものですよね。不思議な読後感の本でした。
私の目が、フシ穴だったと気づいたお話の数々。「とってください」では、なつかしい人々がお話の中から現れて来ました。読んでいて、フシギで楽しかったです。
なんて事のない日常の風景が、いしいさんの頭を通して言葉になると、ちょっぴりほつれてゆるーくなるんだな。本を閉じて顔を上げれば、世の中は少し不思議そうな顔をして首をかしげている。
いしいしんじさんが、SP盤(78回転)の愛好家であることは、ひろく知られるところです。
この度、3年ぶりとなる小説集『マリアさま』の刊行を記念し、いしいしんじさんに、ご自身のSP盤コレクションの中から、1篇につき1曲、計27曲を選曲いただきました。ここにプレイリスト〈『マリアさま』のためのサウンドトラック〉を公開いたします。貴重なSP盤のレーベル画像、音源の数々を、小説集『マリアさま』と共に、お楽しみください。
SP盤とは……現在のレコード(LP盤)普及以前、1950年代後半まで生産された蓄音機用レコードのこと。1分間に78回転することで音を再生するため、78rpmとも表記される。材質のシェラックは、塩化ビニール製のLPに比べ脆く、割れや経年劣化により現存数も少なくなっており、状態の良い盤を見つけることは困難になりつつある。