これが本当に「新しい」文学だった。 ヨコからタテへ――― 00年代文学において、もっとも重要な書き手の1人、福永信のデビュー作、待望の新装版。 一行が延々とヨコに続いていく仕掛けで世間を挑発した衝撃作『アクロバット前夜』(2001年/弊社刊)、タテ書きにてふたたび! - - - いま再び 〈世界〉に問いかける 未来への希望 - - - 細部にまで仕掛けられた罠と、濃密な時間が展開する疾走感、圧倒的筆力で描かれる超日常を、お楽しみください。 - - - とにかくものすごく面白い。しかしその面白さを伝える形容詞が私には見つからない。「形容詞が見つからない」というのは大変なことで、つまり、福永信の書く小説が既存の小説と違うところで、誰にも媚びずに書かれているということだ。 人物は性格で描かれず、行動や反応として描かれる。彼らは状況から逃げ出さない。状況が彼ら自身なのだ。ところがその状況がそもそもありえない。その「ありえなさ」の前で人物は驚かない。作者もためらわない。かと思うと人物は本筋と関係ないところで驚く。私はありえない状況の爽快さに笑い、人物が驚くことのバカバカしさに笑った。笑いはいつも不意打ちで、こんな笑いは他に思い当たらない。ここにある短編を成り立たせているのは、タイトルにあるとおり、まさに想像力と論理と筆力のアクロバットなのだ。 小説の夢見た〈自由〉がここにある。 保坂和志 (帯より) - - -
- 書名
- アクロバット前夜90°
- 著者
- 福永信
- 仕様
- 四六判 / 232ページ
- 発売日
- 2009年05月01日
- ISBN / Cコード
- 978-4-89815-269-0 / C0093
- 定価
- 1,760 円(本体 1,600 円+税)