寸足らずの男が見た天国の扉 〜奥野真哉&FRIENDSアンチェイン・ライブによせて |
10月6日、アンチェイン数々のイベントの掉尾
を飾った奥野真哉&フレンズのライブは、 BonniePinkに始まり、ヒックスヴィルの真城嬢、
クラリネットの大隈氏が続々登場、友情による つながりならではの豪華さのなか、クライマッ
クスに現れたのがアンチェイン梶。 この時のために用意した、大阪「マルミ」の
真っ白いニッカーボッカーがライトに映える。 昼間に、大阪でとびきりのお好み焼きを御馳走に なったお礼にと、永石や再現シーンで梶役を演じた 川崎氏と連れ立って行った月島のもんじゃ 焼きの店でも、好きだという浅草花やしきの雑踏 の中でも、梶の口からは唄が衝いて出ていた。 控え室でビールを絶え間なくあおりながら 迎えた本番、歌いだした梶の背後に流れてい るのは葛西戦のフィルム。 幾度も幾度も倒れる梶の姿に唄が重なる。 「いいことあるって、あってほしいっすよ」 ダウン、「俺の叫びも嘆きとぼやきに変わるのか」そしてまたダウン。 梶はいまだにアンチェイン梶であり、リング がどこにあるのかを探しているように見える。 闘うための場所、リング。 結果としての勝ち負けよりも、闘うところを 見つけられない悲しみ、苛立ち。観客は試合 を観ているように息を詰め、歌う梶の姿に釘 付けになる。ソウル・フラワー・ユニオンの 奥野真哉とアンチェイン梶、魂で繋がった唄 が人々を震わせた夜。最後にアンチェインのテ ーマが流れる中、拍手に包まれて退場する梶 の姿は、実際に歩めなかった花道を引き揚げ るように映った。 願わくば大阪でも、彼の唄を響かせたいと思う。(テキスト:田辺夕子) |